ビーコンのお話 その1 電磁気学とビーコンのシグナル検索

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 雪崩ビーコンの中には磁界型アンテナであるバーアンテナが入っています。フェライトコアの周りにコイルが巻かれた「微小(波長に比べて十分小さい)ループアンテナ」の一種です。

 同じく中波帯を扱うAMラジオなどでは、波長にくらべて充分遠方で受信するため、外に向かってゆく「放射電磁界」をアンテナで受信していますが、雪崩ビーコンのシグナルを受信する数10メートルの距離では「近傍界(λ/2π=656m/6.28=104.4m)」の範囲内であるため「誘導電磁界」成分の磁力線をたどってゆくことになります。テキストなどでよく目にする「かぼちゃ型」のflux lineはこの「アンテナ周辺の誘導磁界の磁束(magnetic flux)の形状」を表しています。
一般的に磁力線にはマクスウェルの応力から説明される以下のような特徴があるようです。
・互いに交わったり、途中で枝分かれしたりしない
・隣り合う線はお互い離れようとし、1本の線は短くなろうとする
 捜索の時に発信ビーコンの側方からスタートすると、大きくカーブを描いて発信アンテナの長軸方向に入っていくことになるので、近距離になったら発信シグナルの間隔を考慮しながらゆっくりアプローチし、磁束の入っていく(出ていく)方向をしっかり見定めるのがピンポイント時間の短縮につながります。
 「電波誘導法」、元々の英語の文献ではradio guideやradio guidanceではなくinduction-line methodと呼ばれています。(electromagnetic) induction(電磁誘導)の起こるline上を辿ってアプローチするというニュアンスでしょうか。鈴木先生の講座では「磁力線探索法」という用語を併用していました。絶妙なネーミングですね。

 磁界によるナビゲーションコンパスへの影響が気になります。コンパスを発信アンテナに密着させるとフェライトコアの方向を向いてしまいますが、数センチ離れると地磁気(50μT)よりもずっと小さい値のようです。
 絶対値は小さいですが、発信アンテナの周波数457kHzで振動する磁界を、共振の原理を利用した「磁界共鳴」で効率よく拾っていると、我々は推測しています。「磁界共鳴」とは「ワイヤレス給電技術」の一つとして近年注目を浴びている概念で初心者向けの書籍も出ており、NPO法人北海道雪崩研究会ではコイル型アンテナ近傍の磁界の分布について文献的考察を行っています。(H.Otsuka )

 10月30日(日)午後にりんゆうホール(北9東2)で行われる山岳雪崩安全セミナーでは工業高校教諭の鎌田先生が、電磁波の基礎からビーコンの仕組みまで分かりやすくお話してくださる予定です。
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